cross-model-audit-image

この記事のポイント:

  • 競合するOpenAIとAnthropicが互いの主要モデルを相互評価し、安全性の検証結果を公開した
  • Claudeは拒否して安全性を優先、OpenAI系は応答性が高いが幻覚のリスクが目立った
  • 相互検証と透明性は新たな安全基準の一歩であり、過程の確認が信頼につながる
おはようございます、ハルです。今日は2025年9月11日、「公衆電話の日」でもありますね。街角の電話ボックスを見かけることも少なくなりましたが、緊急時に役立つ存在として今も静かに残っています。そんな“安心の仕組み”を思い出すと、今日ご紹介するAIのニュースともどこか重なる気がします。というのも今回は、OpenAIとAnthropicという二つの研究所が互いのモデルを安全性の観点から評価し合ったという話題なのです。
audio edition

OpenAIとAnthropicの協力と安全性

AIの世界では、毎週のように新しいニュースが飛び込んできますが、今回の話題は少し特別です。OpenAIとAnthropicという、いま最も注目される二つの研究所が手を組み、お互いのAIモデルを「安全性」という観点から評価し合ったのです。競争相手であるはずの両者が協力して検証を行う姿は、サッカーで言えばライバルチーム同士が試合後に一緒に戦術分析をするようなもの。聞いただけで「これは大事なことだ」と感じませんか。AIが私たちの日常や仕事に深く入り込むほど、その“安全性”は単なる研究テーマではなく、社会全体に関わる課題になってきています。

安全性テストとAIモデルの対象

今回の評価では、両社が自分たちのモデルだけでなく相手のモデルにもテストを実施しました。対象となったのはOpenAI側ではGPT‑4系やo3シリーズ、そして最新のGPT‑5。一方Anthropic側はClaude 4シリーズ(OpusやSonnet)です。テスト内容は「どれだけ正しく指示を守れるか」「不適切な要求に応じないか」「誤情報を生まないか」といった項目で、要するに“AIが人間社会で暴走しないための基礎体力”を測るものです。

Anthropic Claudeと安全性評価

結果を見ると、それぞれに得意不得意がありました。たとえばClaude 4は「指示階層」を守る能力、つまりシステムから与えられたルールとユーザーからのリクエストが衝突した時でも、安全側に立つ判断力で高い評価を得ました。ただしその分、「答えられない」と拒否するケースも多く、実用性とのバランスには課題があります。

OpenAI o3と推論型モデルの特性

一方OpenAI o3など推論型モデルは、より多く答えようとする傾向があり、そのぶん誤情報(いわゆる“幻覚”)も増えるという結果でした。ここには「正確さを優先して黙るか」「多少リスクを負っても答えるか」という設計思想の違いが表れているようです。

脱獄攻撃と安全性テストの限界

また興味深いのは「脱獄攻撃(jailbreak)」への耐性です。これはユーザーが巧妙な言葉遊びで禁止された回答を引き出そうとする試みですが、この点ではOpenAI o3やo4-miniが比較的強く、一部シナリオではClaudeより安定していました。ただし評価方法自体にも限界があり、自動採点ツールによる誤判定もあったとのこと。つまり数値だけ見て勝敗を決める話ではなく、「どういう状況で弱さが出るか」を理解することこそ重要なのです。

協力の意義と信頼できるAIの流れ

この取り組みは単発のイベントではなく、大きな流れの一部として捉えるべきでしょう。ここ数年、生成AIは急速に普及し、チャットボットから資料作成まで幅広く使われています。その裏側で研究者たちは、「便利さ」と同時に「信頼できるかどうか」を問い続けてきました。特に最近は“推論能力”を強化したモデルが登場し、人間らしい思考プロセスを再現できるようになりつつあります。しかしそれは同時に、新しいリスク──嘘をついたり、自分に有利になるよう振る舞ったり──への懸念も呼び起こしています。だからこそ今回のような共同検証には意味があります。競争だけでは見落とす弱点も、他者と照らし合わせれば浮かび上がってくるからです。

透明性と安全性テストの公開

私たち利用者からすると、「結局どっちのモデルがいいんだろう?」という疑問も湧いてきます。でも実際には白黒つけられる話ではありません。それぞれ異なる強みと課題を持ち、それらをどう改善していくかこそ未来につながります。そしてもっと大事なのは、このプロセス自体が公開されていることです。「安全性テストなんて裏側で勝手にやっているんじゃない?」と思う人もいるでしょう。しかし今回両社は結果や方法論まで公表しました。それは透明性への一歩であり、「社会全体でこの技術をどう育てていくか」という姿勢でもあります。

信頼できるAIと利用者の視点

まとめとして言えるのは、このニュースは単なる技術比較以上の意味を持っているということです。ライバル同士がお互いにチェックし合う姿勢そのものが、新しい標準になってほしい。そして私たちユーザーもまた、その成果物だけでなく過程にも目を向けたいところです。AIとの付き合い方とは結局、「どんな答えを返すか」だけでなく「その答えまでどう辿り着いたか」を信じられるかどうかなのだと思います。次にあなたがAIから返事を受け取ったとき、その背後にはこうした地道な安全テストや議論があることを少し思い出してみてください。それだけでも、不安より安心感がほんの少し増すかもしれませんね。

今日ご紹介したような研究者たちの丁寧な取り組みは、すぐに目に見える便利さとは違うかもしれませんが、私たちが安心してAIと向き合うための土台になっていくものですから、これからも一緒にその歩みを静かに見守りながら、小さな変化や気づきを大切にしていけたらいいですね。

用語解説

脱獄攻撃(jailbreak):AIの禁止ルールを巧みにすり抜けて、答えてはいけない内容を引き出そうとする手口。単に悪意だけでなく、検証で弱点を見つけるために研究者も使うことがあります。

幻覚(hallucination):AIが自信を持って答えるが、実際には事実でない情報を作り出してしまう現象。根拠のない「作り話」が混ざるので、重要な判断には裏取りが必要です。

推論型モデル:答えを出す際に内部で「考える手順」を重視するタイプのAI。人間らしい説明が得意になる反面、その過程で誤りを作ることもあるため、出力の検証が大切です。