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この記事のポイント:

  • 幻覚はAIが自信満々に誤情報を出す現象で、正解率重視の評価が断定を強化する
  • OpenAIは不確実性を評価に組み込み、分からないと答える設計を提案している
  • 利用者もAIを万能視せず、答えの確かさを確認する習慣がますます重要になる
おはようございます、ハルです。今日は2025年9月13日、ちょうど「世界法の日」とされていて、法律や正義の大切さを考えるきっかけの日だそうです。人と社会を支えるルールを見直すように、AIの世界でも「信頼できる仕組み」をどう作るかが問われています。そんな流れの中で今回は、AIが時に生み出してしまう“幻覚”について、OpenAIが発表した最新の研究成果をご紹介します。
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AIと幻覚の現象と背景

AIの世界では「幻覚(ハルシネーション)」という言葉がよく出てきます。もちろん、SF映画のようにAIが夢を見ているわけではありません。ここでいう幻覚とは、AIが自信満々に語る内容が実は間違っている、という現象のことです。たとえば「ある研究者の博士論文のタイトルは?」と聞いたら、それっぽい答えを堂々と返してくるものの、どれも事実ではなかった――そんな経験をした方もいるかもしれません。今回、世界的なAI企業であるOpenAIが、この幻覚について改めて分析し、その原因と解決策を示す研究成果を発表しました。これは単なる技術的な話題にとどまらず、「私たちはAIとどう付き合うべきか」という問いにもつながってきます。

AIと分からない応答の問題

今回の発表で興味深いのは、幻覚が「モデルの能力不足」だけでなく、「評価方法」にも起因しているという指摘です。現在、多くのAIモデルは正解率(accuracy)で性能を測られています。つまり、どれだけ正しい答えを返せたかがスコアになる仕組みです。しかしこの方式だと、「分からない」と答えるよりも、とりあえず推測して当たれば得点になるため、モデルは“自信ありげに間違える”方向へ学習してしまうのです。人間でいえば、テストで空欄にするより適当にマークしたほうが点数になる状況に似ています。その結果として、不確かな情報でも断定的に提示する癖が強化されてしまうわけです。

OpenAIの提案と分からない設計

OpenAIは、この問題への対処として「不確実さを認める」姿勢を評価基準に組み込むべきだと提案しています。つまり、自信がないときには「分からない」と答えることを許容し、そのほうが誤った断定よりも望ましいという考え方です。このアプローチは単純ですが効果的で、人間社会でも同じことが言えます。「知らない」と言える人ほど信頼できる――そんな感覚に近いでしょう。ただしデメリットもあります。「分からない」が多すぎれば使い勝手が悪くなるため、そのバランス調整は依然として難題です。また利用者側も、「万能な答え製造機」を期待する気持ちを少し抑えて、「一緒に考える相棒」として受け止める視点が必要になってきます。

AI開発と信頼関係の評価軸

背景を振り返ると、この議論はAI開発全体の流れとも深く関係しています。大規模言語モデルはここ数年で飛躍的に進化し、自然な文章生成や高度な推論まで可能になりました。しかし同時に、「もっと賢く」「もっと正確に」という競争の中で、精度至上主義的な評価軸が支配的になっていた面があります。その結果、ランキングやベンチマークで高得点を取ること自体が目的化し、本来重要だった「信頼性」や「誠実さ」が後回しになっていたのです。今回の研究は、その流れへの一種のブレーキ役とも言えます。「正解率100%」という幻想ではなく、「不確実さとうまく付き合う」方向へ舵を切ろうという提案なのです。

利用者と分からない回答がもたらす信頼関係

こうした視点は、私たち利用者にも示唆を与えてくれます。ビジネスや日常生活でAIを使う場面では、「答えそのもの」だけを見るよりも、「その答えがどれくらい確かか」を意識することが大切になります。人間同士でも「それ本当?」と確認する習慣がありますよね。同じようにAIにも問い直すことで、過剰な依存や誤情報によるリスクを減らせます。そしてもし将来、AI自身が「これは分からない」と素直に言えるようになったなら、それは単なる性能向上以上に、人間との関係性を変える出来事になるでしょう。結局のところ、このニュースは「AIは万能ではない」という当たり前の事実を改めて突きつけています。しかし同時に、それを正直に認める設計思想こそ、人間社会との共存には欠かせないものだとも感じます。私たちはこれから先、どんなAIなら安心して隣に置いておけるだろうか。その問いへのヒントが、この“幻覚”研究には隠されているように思います。

AIの幻覚という少し不思議なテーマを通して見えてきたのは、結局のところ「分からない」と言える誠実さが信頼につながるというシンプルな真実でしたね。私たちも日々の中で完璧さを求めすぎず、不確かさを受け入れながら歩んでいくことが大切なのかもしれません。今日のお話が、AIとの向き合い方を考える小さなきっかけになればうれしいです。

用語解説

幻覚(ハルシネーション):AIが自信たっぷりに話すけれど事実ではない情報を返す現象。映画の夢とは違い、根拠のない“でっち上げ”のような回答を指します。

大規模言語モデル:大量の文章データからパターンを学んで、人間らしい文章や応答を作るAIのこと。たくさん学んでいるけれど、人間のような「理解」をしているわけではありません。

正解率(accuracy):出した答えがどれだけ正しかったかを割合で示す評価指標。シンプルで分かりやすい反面、「分からない」を選べないと誤った断定をしやすくなるという欠点があります。