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この記事のポイント:

  • 地域ごとにAIの利用用途が大きく異なり、産業構造がそのまま反映されている
  • 個人利用は補助的協働から指示型の自動化へ移り、国や所得で傾向が異なる
  • 企業はAPIで大規模自動化を進めており、職場や雇用への影響が現実味を帯びる
おはようございます、ハルです。今日は2025年9月18日、「かいわれ大根の日」でもあるそうです。小さな芽がすくすくと伸びていく姿を思うと、日々の変化や成長を静かに見守る気持ちになりますね。そんな今日ご紹介するのは、世界各地でAIがどのように活用されているかを示した最新の報告についてです。
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AI活用と地域、働き方の概観

ハワイでの旅行計画、マサチューセッツでの科学研究、インドでのウェブアプリ開発。一見すると共通点がなさそうなこれらの活動に、実は同じAIが関わっていると聞くと少し驚かれるかもしれません。米国のAI企業Anthropicが発表した最新の「Economic Index」では、自社モデルClaudeが世界各地でどのように使われているかを詳細に分析しています。今回の報告は単なる利用統計にとどまらず、「AIが経済や働き方にどう入り込みつつあるか」を示す小さな地図のようなものになっています。私たち社会人にとっても、“AIをどう受け止めればいいのか”を考える手がかりになる内容です。

地域別のAI活用傾向と産業の違い

今回明らかになったのは、AI利用には地域ごとの個性が強く表れているということです。例えばマサチューセッツでは科学研究への活用が目立ち、ブラジルでは語学学習や翻訳への関心が世界平均よりもはるかに高いとのこと。米国内でも違いは顕著で、カリフォルニアではコーディング関連、ニューヨークでは金融関連、ワシントンD.C.では文書編集や情報検索といった知識労働系タスクが多く見られます。一方でハワイでは観光業に直結する依頼が突出しており、その土地ならではの産業構造がAI利用にも反映されていることが分かります。

任せると協働、AI活用の変化

また興味深いのは、「人間とAIの関わり方」が変化している点です。これまで多かった“補助的な使い方”、つまり調べ物やアイデア出しなど人間と協力する形から、最近は“自動化”へと比重が移りつつあります。具体的には、人間側から細かな指示を出さなくてもAIに任せて仕事を完了させるケース(レポートでは「指示型オートメーション」と呼ばれる)が急増しており、この9か月ほどで27%から39%へと伸びたそうです。これは裏を返せば、多くのユーザーが「もう任せても大丈夫だ」と感じ始めている証拠とも言えます。ただし一方で、国や地域によって傾向は異なり、高所得国ほどむしろ“協働型”利用が多いという逆説的な結果も出ています。つまり「信頼して任せる」方向性と「一緒に考える」方向性、その両方がまだ揺れ動いている段階なのです。

AI活用と自動化、企業利用の実態

さらに今回初めて企業向けAPI利用データも公開されました。一般ユーザーよりも企業ユーザーのほうが圧倒的に自動化志向が強く、77%ものタスクが完全自動化パターンだったとのことです。背景にはコスト効率や生産性向上への期待がありますが、それだけに労働市場への影響も無視できません。「人間とAIで分担する」のか「AIに丸ごと置き換える」のか、その選択次第で職場風景は大きく変わっていくでしょう。

AI活用の普及速度と働き方の不安

こうした流れを振り返ると、AI活用は電気やエンジンなど過去の汎用技術と似た道筋を歩んでいるようにも見えます。当初は一部の先進地域から普及し、その後社会全体へ広がっていった歴史があります。ただし今回特徴的なのは、そのスピード感です。数十年単位だった技術浸透が、今や数年どころか数カ月単位で変化している。その速さゆえに、「追いつけるだろうか」という不安を抱く人も少なくないでしょう。しかし報告書を読む限り、“遅れている”というより“それぞれ違う形で取り入れている”と言ったほうが正確なのだと思います。

AI活用の選択肢としての任せるか協働か

最後に、このニュースから私たち個人として何を感じ取ればよいのでしょうか。一つ言えるのは、「使い方そのものを選ぶ自由」がまだ残されているということです。任せきりにするのも、一緒に考える相棒として使うのも、それぞれメリットがあります。そして地域や職種によって最適解は異なるでしょう。この揺らぎこそ、今まさに私たちが“AI時代の初期”を生きている証拠なのだと思います。

あなたの選択:AI活用と働き方

結局のところ問いはシンプルです。「あなたはAIを助手として迎えたいですか、それとも代理人として任せたいですか」。その答え次第で、自分自身の日常や仕事との付き合い方も少しずつ変わっていく気がします。

今日ご紹介した内容を振り返ると、AIの広がり方や使い方は一様ではなく、それぞれの地域や人の選択によって姿を変えていることが見えてきますね。だからこそ「どう付き合うか」を自分で決められる余地がまだ残されているのだと思いますし、その自由さは少し心強くも感じます。これからも変化は続いていきますが、焦らず、自分に合った距離感を探していければ十分なのではないでしょうか。

用語解説

API:「アプリケーション・プログラミング・インターフェース」の略で、ソフト同士がやり取りするための窓口です。たとえば自分のアプリから天気情報や支払い機能を借りるときに使われます。

指示型オートメーション:人が細かく指示しなくても、AIが受けた指示に基づいて仕事を自動で完了させる運用形態です。途中の判断や手順の実行までAIが担うケースを指します。

Economic Index:今回の記事で触れられているAnthropicの報告書名で、「どの国や地域でどんな目的でAIが使われているか」を数値や地図のように示した経済・利用動向の指標です。