【第30話】AIと生きる「学び」のかたち：創造性・共感を育てるこれからの教育

AIと学ぶ新しい時代の始まり

「AIと一緒に学ぶ時代って、どういうことなんだろう？」
そんなふうに思ったことはありませんか。最近では、AIが仕事を手伝ってくれるだけでなく、学びの場にも入り込んできています。たとえば、語学アプリで発音をチェックしてくれたり、質問に即座に答えてくれるチャット型の学習ツールが登場したり。こうした変化は便利な反面、「人間らしい学びって何だろう？」という問いも浮かび上がらせます。

特に注目されているのが、「AGI（汎用人工知能）」と呼ばれる、人間のように幅広い知識や判断力を持つAIの登場です。まだ完全には実現していませんが、その可能性はすぐそこまで来ているとも言われています。もし本当にそんなAIが身近になったら、私たちはどんなふうに学び、成長していけばいいのでしょうか。

AIとのパートナーシップ

まず、「AIと一緒に学ぶ」と聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。先生の代わりになる存在？ それとも、自分よりも物知りなライバル？ 実際にはそのどちらでもなく、“パートナー”としての役割が期待されています。

AIは膨大な情報を瞬時に整理し、必要な知識を私たちに届けてくれます。でも、それだけではありません。たとえば、自分の理解度や関心に合わせて内容を調整してくれるなど、一人ひとりに寄り添ったサポートも可能になっています。これは従来の画一的な教育とはまったく違う、新しい学び方です。

しかし、それだけで十分なのでしょうか。実はここからが大切なポイントです。AIが得意なのは“知識”や“情報”の処理ですが、“創造する力”や“他者への共感”といった、人間ならではの力はまだ苦手です。つまり、これからの時代には「AIにはできないこと」を意識的に育てる必要があります。

たとえば、ある問題について考えるとき、「正解を探す」のではなく、「自分ならどう考えるか」「相手はどう感じるか」といった視点を持つこと。それこそが、人間だからこそできる深い学びにつながります。そしてそのような力こそ、変化の激しい社会で柔軟に生き抜くための土台になります。

生涯学習としての新しい意味

これまで、「勉強」は学生時代だけのものと思われがちでした。でも今では、大人になってからも新しいスキルや考え方を身につける「生涯学習」が当たり前になりつつあります。その背景には、技術や働き方が次々と変わる現代社会があります。一度覚えた知識だけでは通用しない時代だからこそ、“ずっと学び続ける姿勢”が求められているのです。

ここでAGIという存在を想像してみましょう。もし、人間並みあるいはそれ以上の能力を持つAIが日常生活や職場に入ってきたら…。単純な作業や定型的な判断は、多くの場合AIが担うようになるでしょう。そのとき、人間には何が残されるのでしょうか？

答えは、「人としてどう生きたいか」という問いそのものです。ただ効率よく働くだけでなく、自分自身の価値観や倫理観を育てながら、自分らしく選択し続ける力。それこそが、人間固有の“責任ある学び”と言えるかもしれません。

また、AIとの共生にはリスクも伴います。誤った情報への依存や、自分で考える力の低下なども懸念されています。だからこそ、「何を信じるか」「どう使うか」という判断力＝リテラシーも重要になります。ただ便利さを享受するだけでなく、その裏側にも目を向ける冷静さが求められているのです。

未来への向き合い方

こうして見てみると、「AIと一緒に学ぶ」というテーマは、単なる技術的な話ではありません。それはむしろ、「人としてどうありたいか」を見つめ直す機会でもあります。

AGIによって多くのことが自動化されても、人間ならではの創造性や共感力は失われません。そして、それらを育むためには、一方的に教わるだけでなく、自分自身で問い続ける姿勢が欠かせません。「これは本当に正しいだろうか？」「私はどう感じただろう？」そんな小さな問いこそが、新しい時代への扉になるでしょう。

今後ますます進化するAI社会。その中で私たちは、“使われる側”ではなく、“ともに歩む存在”として関係性を築いていく必要があります。そしてその第一歩となるのが、「学び方」そのものへの見直しなのだと思います。

静かな対話を重ねながら、自分自身との距離感も大切にしていく——そんな未来志向の学び方こそ、この時代だからこそ育てたい姿勢なのかもしれません。