Vol.04｜生成AIとは何か：コンピュータが「創る」時代のはじまり

生成AIとは？──人のように「作り出す」AI

生成AI（せいせいエーアイ）は、「Generative AI（ジェネレーティブ・エーアイ）」という英語をもとにした言葉です。「Generative」とは「生み出す」「作り出す」という意味で、その名の通り、生成AIはコンピュータが自分で新しいものを生み出すことができる技術です。

これまでのAI（人工知能）は、たとえば写真を見て「これは猫です」と判断したり、質問に対して正しい答えを選んだりするような、「決まった答え」を見つけるのが得意でした。でも、生成AIは少し違います。文章を書いたり、絵を描いたり、音楽を作ったりと、人間のように“何かを創る”ことができるのです。

たとえば、「猫についての詩を書いて」とお願いすると、それに合った詩を考えてくれたり、「宇宙っぽい風景画を描いて」と頼むと、それらしい画像を作ってくれたりします。まるでコンピュータが“想像力”を持っているかのように感じられるかもしれませんね。

生成AIの仕組みと活用法：どうやって“創造”しているの？

では、生成AIはどうやって新しいものを作っているのでしょうか。そのカギとなるのが「学習（がくしゅう）」です。人間も本や会話から言葉や知識を覚えるように、生成AIもたくさんのデータから学びます。

たとえば文章を書くタイプの生成AIには、「GPT（ジーピーティー）」というしくみがあります。これは、大量の本やニュース記事、インターネット上の会話などから言葉と言葉のつながり方や表現方法を学びます。そして、「次に来そうな言葉」を予測しながら文章を作っていきます。ちょうど、小さな子どもが毎日の会話から言葉づかいを覚えていく様子にも似ています。

一方で、画像を作る場合には「GAN（ガン）＝敵対的生成ネットワーク」という方法が使われます。ここでは2つのAIが登場します。一方は画像を作る役目、もう一方はその画像が本物っぽいかどうかチェックする役目です。この2つがお互いに競争しながらレベルアップしていくことで、本物そっくりな画像が生まれていきます。

こうした技術によって、小説風のストーリーを書いたり、美しいイラストやリアルな写真風画像をゼロから生み出したりできるようになりました。広告やゲーム制作だけでなく、教育や医療などさまざまな分野でも活用され始めています。

生成AIの歴史：静かな始まりから爆発的な進化へ

実は、「コンピュータにも創造性はあるのか？」という問いは昔からありました。1980年代にはすでに研究者たちによって議論されていましたが、そのころはまだ夢物語のように思われていました。

大きな転機となったのは2014年です。この年、「GAN（敵対的生成ネットワーク）」という新しい技術が登場しました。それまで多くのAIは「正解」を当てることばかりしていましたが、このGANによって「正解がないもの」、つまり絵や音楽なども作れる可能性が広がったのです。

そして2022年には、「ChatGPT（チャット・ジーピーティー）」というサービスが登場しました。これは誰でも簡単に使える形で、高品質な文章やアイデアを生み出せるツールとして、多くの人々に衝撃と感動を与えました。この出来事によって、一気に世間でも「生成AI」という言葉が知られるようになりました。

生成AIの利点と課題：夢広がる未来と立ち止まって考えるべきこと

生成AIには多くの魅力があります。まず、人手では時間がかかる仕事でもスピーディーにこなせるため、忙しい現場では大きな助けになります。また、人間では思いつかないようなユニークなアイデアや表現も生み出せるため、新しい発想への扉も開いてくれます。

しかし、その一方で注意しなくてはいけない点もあります。たとえば、生成された文章や画像には間違った情報や偏った内容が含まれてしまうことがあります。また、本物そっくりにつくられた偽情報（フェイクニュース）が広まってしまう危険性もあります。

さらに、著作権（ちょさくけん）という問題もあります。他人が作った作品によく似たものを無断で使うことになれば、それはルール違反になる可能性があります。そして何より、人間ならではの感情や空気感まで理解するにはまだ限界があります。

だからこそ、大切なのは「ただ便利だから使う」のではなく、「どう使うべきか」をよく考えることです。技術そのものだけでなく、それによって社会全体にどんな影響がおよぶかにも目配せする必要があります。

これからの生成AI：私たちの日常とどう寄り添う？

これから先、生成AIはもっと身近になっていきそうです。仕事ではプレゼン資料づくりや企画書を書く手助けとして活躍したり、自宅ではオリジナルポスターや年賀状デザインなど、自分だけのお楽しみに使えたりするでしょう。

でも同時に、「人間らしさ」と「機械らしさ」のバランスについて考えることも大切になります。ただ効率よくなるだけでなく、人間ならではの感性や思いやりとの調和（ちょうわ）が求められる時代になるでしょう。

学校でも変化がおこっています。「正解」を教えるだけでなく、自分で考えたり、新しいアイデアを形にしたりする学びへと変わろうとしている中で、生成AIはそのサポート役になる可能性があります。ただし、それには先生や生徒だけでなく、大人たち全体で「どう使うべきか」を考えていく必要がありますね。

まとめ：「生み出す」力との向き合い方

今回は「生成AI」について、その意味や仕組み、これまで歩んできた道筋から未来への可能性まで、一緒に見てきました。ただ便利な道具というだけではなく、この技術は私たち一人ひとりの日常にも関わってくる存在になっています。

だからこそ大切なのは、「どう付き合うか」という姿勢です。「全部お任せ」で済ませず、自分自身でも考えながら使っていく。その心構えこそ、新しい時代との上手な付き合い方につながります。

これから先も進化していく生成AI。その力とうまく向き合うことで、人間ならではの創造力もより豊かなものになっていくことでしょう。