学習のポイント:

  • GPUは、画像処理やAIの学習において重要な役割を果たす装置で、同時に多くの計算をこなすのが得意です。
  • ディープラーニングでは、大量のデータを効率よく処理するためにGPUが欠かせません。
  • GPUは高性能ですが価格が高く、電力も多く使うため、クラウドサービスで利用されることが一般的です。

AIの進化を支える「GPU」って何?

パソコンやスマートフォンに映る美しい映像。その裏側では、実はものすごいスピードで「計算」が行われています。ゲームのリアルなグラフィックや映画のCG、さらには最近話題になっているAIによる文章生成や画像作成も、この“計算力”によって支えられています。

その中心的な役割を担っているのが「GPU」と呼ばれる装置です。あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、今ではAI技術を支えるうえで欠かせない存在となっています。

GPUはどんな仕組み?なぜAIと相性がいいの?

GPUは「Graphics Processing Unit(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)」の略で、日本語では「画像処理装置」と訳されることがあります。もともとはゲームや映像編集など、グラフィックを素早く描画するために作られたものです。

しかし近年、その「並列計算」という特性が注目され、AIの学習にも広く使われるようになりました。

並列計算とは、一度にたくさんの小さな計算を同時にこなす能力のことです。たとえば、大勢で一斉に掃除をすると部屋があっという間にきれいになるように、GPUは数千もの小さな計算ユニットを使って、大量のデータを一気に処理します。

この特性が、ディープラーニング(深層学習)と呼ばれるAI技術と非常に相性が良いのです。ディープラーニングでは、大量のデータを何度も繰り返し計算して学習する必要があります。そのため、高速かつ効率的に処理できるGPUはまさに最適なのです。

写真探しから考えるGPUとAIの働き

もう少し身近なたとえで考えてみましょう。もしあなたが1000枚の写真から猫だけを探し出すよう頼まれたらどうしますか? 一人で順番に見ていくよりも、1000人で1枚ずつ分担した方がずっと早く終わりますよね。この「1000人分の目」にあたる部分がGPUだと思ってください。

そして、この猫探しこそがAIによる画像認識や分類と似たような作業なのです。こうしたタスクでも、GPUはその力を発揮しています。

ただし、高性能ゆえに注意点もあります。GPUは価格が高めで、多くの電力も消費します。また、その能力を最大限引き出すには専門的な知識や環境づくりも必要になります。

そのため、多くの場合はクラウド上で提供されているGPUサービスを利用するケースが増えてきました。「クラウドAI」という言葉には、こうした背景があります(詳しくは別の記事でご紹介します)。

これからも活躍するGPUとその可能性

これからますます進化していくAI。その土台として働いているGPUは、まさに縁の下の力持ちです。普段あまり意識されることはありませんが、そのおかげで私たちは便利なサービスや新しい体験を日々享受できているわけですね。

今後、「TPU」や「推論最適化」といった関連技術についても取り上げていきます。それらもまた、GPUとの関係なしには語れない重要なテーマです。一見すると難しそうな言葉でも、その背景には人間による工夫や試行錯誤があります。

ひとつひとつ丁寧に紐解いていけば、「なるほど、そういうことだったんだ」と思える瞬間がきっと訪れるでしょう。

次回は、ディープラーニング専用につくられた特別なチップ「TPU」についてご紹介します。AIという“頭脳”をさらに深掘りしてみましょう。

用語解説

GPU:「Graphics Processing Unit」の略称で、日本語では「画像処理装置」と呼ばれます。主にゲームや映像などグラフィック関連の処理を高速化するためにつくられましたが、現在ではAI学習にも広く使われています。

並列計算:多くの小さな計算作業を同時に行う方法です。大勢で一斉に掃除することで短時間できれいになるように、一度に大量のデータ処理が可能になります。

ディープラーニング:AI技術のひとつで、大量のデータからパターンや特徴を学び取る方法です。画像認識や文章生成など、人間らしい判断や表現にも応用されています。