学習のポイント:

  • ニューラルネットワークは、人間の脳のしくみをまねて作られたAI技術で、情報を処理するための仕組みです。
  • 「ノード」と呼ばれる小さな計算単位が集まり、データを受け取り、特徴を見つけて判断につなげます。
  • 大量のデータからパターンを見つける力がありますが、学習には時間とデータが必要で、結果の理由がわかりにくいという課題もあります。

人の脳にヒントを得たAIの考え方

私たち人間の脳は、無数の神経細胞がつながり合って情報をやりとりし、「考える」ことを可能にしています。このしくみからヒントを得て作られたのが、「ニューラルネットワーク」と呼ばれるAI技術です。少し難しそうな名前ですが、実はすでに私たちの日常生活に深く入り込んでいます。

たとえば、スマートフォンの顔認証や音声アシスタントとの自然な会話、ネットショッピングで表示されるおすすめ商品など、その裏側ではニューラルネットワークが静かに働いています。知らないうちに、多くの場面でこの技術のお世話になっているわけです。

ノードがつなぐ情報処理の流れ

ニューラルネットワーク(英語では Neural Network)は、情報を処理して判断や予測を行うための「モデル」の一種です。ここでいうモデルとは、「入力されたデータから意味を読み取り、それに応じた答えを出す仕組み」と考えるとわかりやすいでしょう。

このモデルは、「ノード」と呼ばれる小さな計算単位がたくさん集まってできています。ノードは、人間の脳にある神経細胞(ニューロン)になぞらえられており、それぞれが少しずつ情報を処理します。そしてノード同士は「重み」という数値で結びついていて、この重みによって情報がどれくらい重要視されるかが決まります。

つまり、入力された情報はノードを通じて次々と伝わりながら処理されていき、その過程で何かしらの判断や予測へとつながっていくというわけです。

画像判定から見えてくる強みと弱点

具体的な例として、「これは猫か犬か?」という画像判定を考えてみましょう。まず画像データが最初の層(入力層)に入ります。そこから複数ある中間層(隠れ層)へと進み、それぞれのノードが画像から特徴を探し出します。「耳が尖っている」「毛並みがふわふわしている」「目が丸い」など、小さなヒントを積み重ねていきます。そして最後に出力層で、「猫っぽい」「犬っぽい」といった結果が導き出されます。

このようにして、ニューラルネットワークは人間には見分けづらいような微妙な違いや複雑なパターンも捉えることができます。そのため、大量のデータから意味ある情報を引き出すことに長けていると言われています。

ただし、この技術にも課題があります。まず、大量のデータと長時間の学習プロセスが必要になる点。そして、一度学んだ内容でも必ず正しいとは限らず、ときには誤った判断につながることもあります。また、「どうしてその答えになったのか」が外から見てもわかりづらいため、結果への説明が難しいという問題も指摘されています。

それでも選ばれる理由とは

それでもなお、ニューラルネットワークという技術は多くの注目を集め続けています。その理由は、人間と同じように「経験から学ぶ」ことができる点にあります。一度覚えたことや経験したことを活かして、新しい状況にも対応できる──そんな柔軟さこそ、この技術ならではの強みです。

最近では画像や音声だけでなく、文章や動画など幅広い種類の情報にも対応できるようになってきました。また、「ディープラーニング」と呼ばれるより高度な手法とも組み合わされ、その能力はさらに高まっています(このあたりについては別の記事で詳しくご紹介する予定です)。

「ニューラルネットワーク」という言葉には少しかたい印象がありますが、その背景には人間の脳への深い理解と観察があります。「考える力」をコンピュータにも教えてあげようという試みによって、この技術は育まれてきました。

これからAIについてもっと知ろうと思ったとき、この「脳によく似たしくみ」が出発点だったことを思い出していただければ嬉しいです。そして次回は、このニューラルネットワークがどんなふうに“学んで”いくのか、その教え方についてもご紹介していきます。

用語解説

ニューラルネットワーク:人間の脳を参考にして作られたAI技術で、入力された情報から判断や予測などを行うための仕組みです。

ノード:ニューラルネットワーク内で情報処理を担う小さな単位。人間でいう神経細胞(ニューロン)のような役割です。

重み:ノード同士をつなぐ際に使われる数値。この値によって情報がどれくらい重要視されるか(強く伝わるか)が決まります。